2011/05/02

「戦火のナージャ」

 ニキータ・ミハルコフ監督の『戦火のナージャ」(太陽に灼かれて2 The Exodus)を観ました。ミハルコフは私の最大のお気に入りです。現役の映画作家、芸術家としては、私の中では頂点です。個人的には、ヴァン・ゴッホに匹敵する人間描写と考えています。

 この作品、どんどん引き込まれてしまい、2時間半はあっという間でした。まずいつものように、美しい大地と地平線。その間に人が生きているんだ、人は自然の一部と思わされます。親子の愛と絆もいつものテーマです。ロシアは家父長の強い世界と思われていますが、強い父のモチーフは今回も感じました。
 またミハルコフ作品は、いつも少し可笑しい日常が描かれ、その直後に登場人物たちを地獄に突き落とします。今回は、士官候補生が合流し、罪人たちと要塞を築く、そこで交わされるエリートと非エリートのちぐはぐなやりとりで笑いを誘った後に、ナチスの戦車がやってくる。ロシア(ソビエト)側は、数人を残して15分の間に240名が殺されてしまう。赤十字の船がナチスのパイロットの怒りを買い、執拗な攻撃を受ける場面もありました。とにかく燃料が切れるまで報復するのです。やられたらやりかえす、という単純な心理(それも怒りよりも怖れ)が恐怖のどん底に突き落とす。日常と地獄が背中合わせと感じさせるのは、さすがです。

 試練を神の計らいと考えなければ、それに耐えるのは難しいのではないか。最大の感想です。

 公開中にもう一度観に行くと思います。

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