2011/07/10

刑事コロンボ

 ピーター・フォークがなくなり、先週「刑事コロンボ」が再放送されていました。私が小学生だった頃、日本で放送が始まりました。また昨年ずっと再放送をしていたので、ずいぶん観たと思います。それでも今回の再放送のなかで「別れのワイン」は観た記憶がなかったなあ。

 ワイナリーの経営者は兄、オーナーは弟。ワインを愛し、20年以上ワイナリーに全勢力を傾けてきた兄と、会社だけを相続し、しかし経営は兄に任せて遊びほうけている弟。金に困った弟が、会社を得ると行ったのを聞いた兄が、思わず弟を殺してしまう。そんなドラマの始まりでした。例によって完全犯罪に至るはずですが、コロンボは早々に誰が犯人か見抜いてしまいます。そして、その裏付けをとっていく。

 なぜ、コロンボは犯人に早くから目星をつけられるのか。それは相手の置かれている立場にたって状況を見ているからに他なりません。この場合、兄は会社にすべてを投入してきた。それだけ投資すれば、何らかの形で元をとりたいし、そのチャンスを奪われるのは許し難い。弟に対しても同様。ずっと面倒みてきたのに、恩を仇で返すようなことをする(と兄は思っている)。だから、兄が弟を手にかけるのは不思議ではない。このドラマがいいのは、容疑者の兄がどう見ても善人に描かれている点。現実は、性格がいいかなど関係ないということが強調されています。そう、殺人の動機は、かならず周囲の状況にあると考えているわけです。

 そして、いつものコロンボのスタイルで相手の懐に入っていく。まずは相手を尊重するところから。コロンボはワインを勉強して容疑者宅に赴き、出されたワインを利き当てます。相手は驚き油断ならないと思っても、かえって心にスキができる。このカレンシーの交換がコロンボならではです。古畑任三郎にも通じる部分であり、「古畑任三郎」がよく描ききっていない部分だと思います。「かみさん」もそう。今回古いドラマを見て気づいたのは、ベビーシッターがどうとかいって、子どもがいたことになっているのですが、後の作品には子どもはいないことになっている。まあ、かみさんの話は、やはり自分が女房の尻に敷かれる男を演じて下手に出る戦術だったんだなあ。いずれにしても、コロンボが容疑者に敬意を払いつつ、相手から真実を引き出してしまう術に、あらためて引きずり込まれました。

 さて、部下から何かを引き出したいのでしたら、コロンボを観るのは悪くありませんよ。巧みな交換にヒントが見つかるはずです。まずは、部下に敬意を払うこと。真剣に話を聴き、真摯に応え対応すること。それだけで部下の態度は変わると思います。

 「刑事コロンボ」、ビデオでも借りられるんですね。でもコロンボの吹き替えは、小池朝雄がいいな。