2010/02/06

人をよろこばせたい

 オリンピックも間近。選手のなかには、みんなを喜ばせたい、という人が少なくありません。それでいいの?

 人を喜ばせたい、という若者は大勢います。いい心がけだと思います。やはり仕事は人に喜ばれることに意味があります。しかし、喜ばれることに満足してしまうのは、かわいがられたい、認められたい、というところがどこかにある。そういう若者は話してみるとどこか緩いな、と感じます。自分のためにやる、という学生もいる。それはそれでどこか品がない。私は一緒に仕事したくないかな。これは、と思うのは、人のために自分を捨てられそうな若者です。

 そういう意味では、中年の星、葛西、岡崎らに期待します。自分を捨てている。若い選手には、恐れることなく頑張ってほしいですね。

2010/02/05

すばらしい上司

 すべてを知っていて、何でも答えてくれる上司。自らはリスクを冒しながら、部下を安全な場所へ案内する上司。部下が困っていれば救いの手をさしのべてくれる上司。責任をひとり背負ってくれる上司。多くの部下たちはこう考えるようです。セミナーで尋ねると、このような回答が多いのです。

 ところがこれらは、上司から見ると、必ずしもいい上司ではない。もちろんかっこいい。こういうリーダーになりたかった人はいるでしょう。しかし、これでは部下の責任感が育たず、能力を引き出せませんし、なによりこの激しい変化の時代、生きぬけないですよ。過労死してしまう。

 部下の側も上司の立場を理解する必要がありますよね。

2010/02/04

トヨタの対応

 私は基本的にトヨタを養護する立場にあります。しかし、プリウスのブレーキ問題。公表せずにこっそり1月生産分から改善していた、というのはいただけません。(日本経済新聞他
 豊田社長就任後初の主要製品に問題があってはいけない、と考えたのでしょうか。興味深いところです。

 一般にヒロイックリーダーのもと、部下たちは上司の顔色を見ながら、いろいろと気を遣います。しかられるぐらいなら先に手を打っておこう、と気をまわすところがあります。それが裏目に出る。一部経済誌をみると社長が「天皇」になっているのかもしれませんが、おうおうにして部下が上司を勝手に「天皇」にしてしまう。

 早い、適切な対応がとられ、トヨタブランドに大きな傷かつかないことを祈ります。

2010/02/03

心柱を見つける

 大阪出張の移動中、京都東寺を訪ねました。ちょうど五重塔ご開帳にあたり、久しぶりに心柱にお目にかかりました。

 東寺五重塔の中心の柱、心柱は、大日如来に見立てられています。柱が仏像に相当する仏様になっているのです。その心柱の周りを宝生如来ら他の四如来と八菩薩が固めており、立体曼陀羅になっています。

 密教をよく理解しているかどうか、自信はありません。ただ、私の認識では、だれにでもあまねくは大日如来が遍在する、と考えるのが真言密教だと考えています。
 であるとすれば、私の心にも、あなたの心にも大日如来がある。心柱のように。しかし現実には悩みや苦しみから離れられない。それは如来が見えないから、愛と欲に執着し、人生困難だらけで、悩みがつきないということ。そこで、心柱が見えるように、右から左から様々な見方を示唆することが、教育やカウンセリングの仕事であることになります。

 五重塔心柱と対面しながら私が考えたのは、こんなことでした。

今年の計画ふたつ

 今年は若者に対するサポートで、今私にできること、フェリスで人気の授業(自分で言うと可笑しいですが)「私のキャリアを考える4」の短縮版を、キャリア・エンパワメントを通じて提供する計画。これから社会に踏み出そうとする人たちに、勇気と気構えをもたらしたい。キャリア・エンパワメントにとっても一事業となるでしょう。

 もうひとつは、「影響力の法則ワークショップ」。直面する問題について、話し合って解決するグループを開催する。
 以前カウンセリングを学びにいったニューヨークの「論理療法研究所(現アルバート・エリス研究所)」では、Friday Night Workshop といって週末にワークショップを実施していました。エリス博士(20世紀後半最大の心理学者のひとり)自ら行う2-3のカウンセリングを目の当たりにして、自らを振り返ろうというものです。またみんな互いにアドバイスしあいます。最後に参加したのは2004年でした。晩年すでに90歳を過ぎ耳もほとんどきこえなくなったエリス博士のカウンセリングは、しかし気迫に溢れており150名ぐらいの聴衆が耳を傾けていました。ワークショップが終わると、クッキーとドリンクでおしゃべり、とネットワーキングを楽しむのです。
 これにちかいイメージを描いています。私のやり方では10人ぐらいが参加できる、出入り自由のグループで、その時抱えている問題を「影響力の法則」で解決していく。昨年幹部養成プログラムで成功した方法です。そんなワークショップを週末の夜に。

 今から楽しみです。

2010/02/02

刑事コロンボ

 NHKで「刑事コロンボ」名作集、のような企画をやっています。コロンボと言えば、よれよれのコートだったり、帰り際に「それからもうひとつ」だったり、相手の心をつかむのは実にうまい。相手の言葉で話すのも、影響力の法則にかなっています。たとえば、今日のように相手が写真家であれば、とにかく写真の話しをしちゃう。それもしつこく。すると相手がつい口をひらいてしまうのです。ここはカレンシーの交換、と考えてみると大いに興味深いものです。「自分の言葉で話しかけてくる」と感じるだけで、相手にとってはカレンシーになっているということです。

 まずは、相手の使う言葉をよく理解することが、相手の心を開く条件になるんでしょう。もちろん、よれよれのレインコートもありだと思いますが、ちょっと勇気が要りますね。

2010/01/31

大人の姿勢〜キャリア教育について

 NHKニュースによると、文部科学省は社会人としての素養を大学で学ばせるよう、大学側に求めるのだそうです。就職した会社をすぐに辞めてしまう若者が多いための対応と報道されました。(残念ながら文科省のサイトを見てもどこにあるかわからない、議事録などがもっと早く見られると、ニュースの後にすぐ見られるのですが)

 私は大学でキャリア教育を担当させていただいており、複雑な気持ちでこの報道を見ました。こうして役所からの求めがあれば大学は積極的に対応するでしょう。しかし、仕事が続かない若者が増えていることへの対応を大学側にばかり求めるのが妥当とは思えません。
 企業が以前よりも人材育成に力を注がなくなっていることは、周知の通り。企業側も余裕がなくなっているのです。終身雇用は崩れていますし。それは仕方ないにしても、現場の人材マネジメントの問題も認める必要があるのではないでしょうか。私の知っている日本の現場の問題は「親身に指導する、ただしその方法にばらつきがあって、苦労する部下がいた」でした。でも今は放置ですからね、冷たい。「自己責任」とか言われて、何もできない上司の犠牲になっている。だから辞めるんじゃないんですか。それも「冷たくされたから」ではなく、「こんな大人の世界がばかばかしいから」なんじゃないかな。
 若者たちは、大人が裸の王様だって見抜いています。

 大学にキャリア教育を、というのは結構ですが、一方で大人がキャリアの姿勢を示さなければ、教育するほどに現実とのギャップは拡大、ますます大人の世界がばかばかしくなってしまうよね。「今の大学生は少子化の中で大事に育てられ、自ら人生を切り開くことができない学生が多いと感じる。大学側は単に就職活動の支援をするのではなく、学生に生き様を考えさせるような指導をする必要がある」との黒田壽二氏(中教審委員 金沢工業大学総長 NHKニュースより引用)のコメントに賛成。それだけに問われているのは、大人の姿勢だと思います。