2010/08/08

首相の平身低頭

 国会内外における菅首相の平身低頭ぶりが話題になっています。参議院議員選挙後「イラ菅がなりをひそめ、ひたすら低姿勢」といった報道が続きましたよね。

 実は私は30年にわたって陰から菅氏に声援を送ってきました。厚労相として薬害エイズ事件に切り込んだときは溜飲を下げましたし、以前首班指名されたときも時の変化を感じたものです。ですから、いよいよ首相か、と思ったら、正直感無量であったのです。

 しかし、就任直後から嫌な予感はありました。「強いリーダーシップを発揮して」と繰り返していたでしょう?ところが、彼には、強いリーダーシップを発揮する準備がなかった。たとえば、小泉さんは就任直後に、あれは参院選だったか勝利しましたね。あの勝利が議会与党に対する大きなカレンシーになった。議会は好きに法案を通せるようになる。かわりに郵政民営化とか靖国神社参拝とか目をつぶることになる。これがリーダーがメンバーと交わすカレンシーです。
 逆に国民あるいは議会にカレンシーを渡す前に、思うような政策など実行できるはずがありません。消費税騒動がきっかけといわれていますが、国民はまずネガティブのカレンシーを受け取ったと感じ、選挙でそのお返しをする。選挙の結果は与野党にとってネガティブカレンシーとなり、政権基盤を脆弱にする。

 たぶん、代表戦にでれば再選するでしょうが、それは反菅陣営(親小沢陣営?)の思うつぼ。カレンシーを押しつけられれば、相手の言いなりにならざるを得ない。反菅陣営のいうことを最後まで聴かなければならなくなるのは、本人にとって不本意でしょう。逆に菅グループを含む反小沢陣営から引きずり下ろされるかもしれない。こんな時忠臣がいないようだしなあ。

 リーダーは、相手より先にカレンシーを差し出さなければならない、というあまりにもわかりやすい事例になったようです。優秀な人ほど陥りやすい罠じゃないでしょうか。