2010/02/16

複雑化への対応は、働き方に影響をおよぼすか

 トヨタの品質問題。今週の日経ビジネスでは、「トヨタの危機 瀬戸際の品質ニッポン」と特集されています。

 その中で、藤本隆宏教授(東京大学)の寄稿がおもしろかった。製品の複雑化が品質問題を困難にしているということ。藤本教授は、日本の自動車メーカーの組織能力が複雑化への対応を高めてきた。しかし、ハイブリッド車のような複雑な製品のもたらす負荷と組織能力のバランスが一時的に崩れたのが、今回の現象だというわけです。なるほど。

 負荷と能力の不均衡とは、こんな理解でいいでしょうか。物事が複雑になりすぎると、カレンシー(この場合情報)の交換が滞る。組織内の相互影響力が下がれば、改善の速度も遅くなり品質問題につながるに違いない。例えば、「もうわけがわからない」から、問題が放置されるといったことです。

 私の関心は、このようなときでも製品の複雑化が進むのだろうか。それとも革命がおこって一気に単純化するのだろうか(例えばすべてが電気自動車になってしまう)、という点です。複雑化が進むなら身内で仕事する方が有利でしょう。優秀な人間を囲い込んで、若いときから教育する。その会社でなければわからないような専門用語まで駆使して仕事をする。サプライヤーには自分の言葉(専門用語)で話しをさせます。容易にまねができないので、他社は追従が難しい。現在のトヨタのハイブリッドが、この典型でしょう。でもこれが単純化したらどうなるのか?

 きっとこれまでとは全く異なるカレンシーが交換されるようになるだろう。勉強していれば誰でも知っている言葉で話され、どこの会社でも同じような技術能力を持つようになる。そう考えると、実はわくわくします。今のトヨタの問題は、仕事の仕方まで変えるかもしれない。キャリアの視点もより短期間になるかもしれない。終身雇用が本当に終わりを告げる時を、今観ているのかもしれない、などと考えています。

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