2008/06/30

紙一枚

 今朝の日本経済新聞に、住友商事加藤進社長の若かりし頃のエピソードが書かれていました(2008年6月30日朝刊13版11面)。今は社長となられた加藤氏ですが、若いときは大きな失敗もあったとのこと。それを忘れずに、自分の仕事と人生の糧にされているのだな、と記事を読んで感じました。私たち忘れてしまって繰り返すことが少なくありません。それだけにその人が覚えていることには、その人の人生の価値を感じます。
 このようなお話しです。オーストラリアの会社に針金を売った。ところが品質問題でクレームとなった。加藤氏はその解決策を1枚の紙に書いて、製造会社の社長に渡した。このやり方が、社長を怒らせてしまった。ここで加藤氏が学んだことは、住友商事の自分にとっては、小さなクレーム処理だったろうが、従業員50人の小さな会社の社長さんから見れば死活問題だ。相手が必死になって再発防止策を考えていたのに、紙一枚で解決しようとしていた自分はいたらなかった、ということです。このエピソードには、仕事に対する真剣さ、相手の立場に立った努力、信頼関係の重要性、などが示唆されており、私はいい話だなあと感じました。
 さて、これをカレンシーの交換で考えてみる。真剣に仕事をしたにもかかわらず品質の問題を起こした社長は、必死だった。自分の何が悪いか分からない。病名の分からない症状と同じです。このままでは会社をつぶすかもしれない。だから必死。必死で努力している人に、紙一枚は大きなネガティブカレンシーとなったのでしょう。そんなに軽く考えないでくれと。これではポジティブなカレンシーになり得ない。こちらも必死で考えないと。
 これはもちろんお客に対してだけの問題ではありませんね。部下に対して、配偶者に対して、子供たちに対して、知らず知らずのうちに軽くあつかってしまいがち。それでは、彼らが真剣に応えなかったとしても仕方ないんじゃないかなあ。加藤氏はこの後社長にまでなるのだから、お客だけでなく同僚や部下にも真剣に応えていったのではないでしょうか。住商400年の重みはこんなところにも見られるといってもいいかな。
 自分も紙一枚、はらりと渡してすまそうとしていることがないだろうか・・・・

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