2010/08/31

民主党代表 選挙

 菅、小沢両氏とも立候補しましたね。予想通りの結果です。

 私は菅氏のファンですが、影響力の点から考えると、小沢氏に学ぶところがあるように思います。小沢氏は政局になると力を発揮する政治家と思われているようです。省庁と闘うイメージがあるものの、官房長官ぐらいしか大臣をやったことがない。本当のところは、霞ヶ関を動かせるのかどうか・・・。その上、世論の支持率は著しく低いでしょう?それでも、党内代議士の過半数は小沢氏を支持するのです。なぜか?

 カレンシーで考えてみましょう。政治家の多くは元々は理想に燃えてこの道に入るんだと思います。最初から利権の仕切り屋になりたくてなる人はいないでしょう。ところが、実際には利権を動かさなければ何の政策も実現しないことに気づく。最初は大いにジレンマを感じるはずです。でも、政治とはそんなもの、と考えるようになるのは不思議ではありません。会社員だったら多かれ少なかれ分かるでしょう?そうして、社会の現実にまみれていくことにどこか後ろめたいところがあるんじゃないかなあ。
 そこに小沢さんは強力な二つのカレンシーを提示する。まず、選挙に勝つ戦術。これは素晴らしいテクノロジーのようですね。社民党も頼りにせざるを得なかったんですから。といっても、実は地道に努力を積み重ねることを要求する。ここにまじめな政治家の道を感じさせます。その上実際勝てるとなったら、これほど大きなカレンシーはないでしょう。
 もう一つのカレンシーは、省庁との対決です。政治家なら国民のために省庁の利権を再分配したいはず。しかし思うようにならないのは、あちらの組織も慣性が働いていて止められないからでしょう。しかし、小沢さんはそんなことお構いなしに、理想をぶつけてくる。友人の元新聞記者たちに聞くと、彼は見た目と違って大変な理想主義者だそうです。それで心酔する人々が多いとか。自分一人ではかなえられない理想を掲げられたら・・・。これほど心強いことはありません!

 さて、まとめると、生き延びる戦術と理想主義、この両面を使って人を動かしている。「影響力の法則」52ページをご覧ください。一番上とその次にこれらが来ているんですよ!!小沢氏の側近が小沢さんは「ステーツマン」と言っていました。本当は分からないんだけれど、そういう気持ちはよく分かります。

 小沢さんの最大の弱点は、省庁を動かせないことかもしれません。だとしたら、総理大臣になんかになったらぼろが出てしまう?本当ですか?分かりません。ただ、言えることは、リーダーがすべきことをしっかりとやっているように見える小沢氏から学ぶことは大きいというわけです。これは、プロジェクトマネジメントや部門の運営でも役立ちますよ。もちろん、しっかりと腰を据えてやらなければなりません。

行き詰まったプロジェクト

 先日研修でお目にかかったあるプロジェクトリーダーの方のお話しです。

 その案件を進めるには、他部門の協力が必要だそう。今すでにいくつもの案件を抱えており、絶妙な調整なくして結果を出すのは容易ではありません。当然、各方面に協力を求めます。ある部門はマネジャーが協力するよ、といってくれ、やれやれと思っていたのだそうです。

 ところが、部門のトップが突然NGをだしてきた。お話しをうかがったのは「なぜ?」というときでした。

 どうやら、部門を越えた要請は控えるように、という全社のお達しのようなものがあったのだとか(それが本当だとしたら、この会社大丈夫なのかな?社外とのアライアンスで生き残ろうとしているんでしょうね)。全社方針には逆らいにくいものです。しかし、本人に会ってみると、本当は何とかしてやってもいい、という雰囲気らしいのですね。こうやって「お達し」の隙間をくぐって、企業は発展してきたとも言います。プロジェクトXが受けた理由の一つはそこでしょう。

 とはいえ、この部門長、積極的に協力してくれるでもない。さてどうしたものか。たぶん論理的に説明してもだめで、「どうしてもお願いします!」という捨て身の行動が必要ではないでしょうか。もっとも、こうなるまえに予防策をはれるのが望ましいのは間違いありません。ステークホルダーひとりひとりにカレンシーを渡しておけばよかったのに。たとえば、相手の部門が困っていることを聞いておくとか、部門長の考えをうかがっておくとか、顔を出して「こんにちは」でもいいんじゃないかと思います。こういうことが、いざというとき助けになるものです。

2010/08/15

未来年表

 NRI(野村総合研究所)の未来年表、2007年版を部屋で見つけました。あらためて見てみると、2007年の未来は微妙に遅れていますね。たとえば、今年には第4世代携帯電話が始まり1ギガ光ネットワークが普及していることになってますが、まだですよね。次世代携帯電話LTE(3.9世代)は年内にスタートするかどうか。2012年には国産ジェット機飛び、2014年には自動車の燃費は2004年比2倍になると書かれています。予定通り未来は来るのでしょうか?

 この微妙な遅れ?の理由に興味があります。意思決定が少し遅れれば、全体が大きく遅れてしまいます。そんなことじゃないかと・・・。リーダーの影響力が問われているんだと思います。

 さて、先日刊行された『Power Up 責任共有のリーダーシップ』、おかげさまで大いに関心をいただいています。明日16日、日本経済新聞夕刊に広告が出ます。多くの方にお読みいただければと思います。

2010/08/08

首相の平身低頭

 国会内外における菅首相の平身低頭ぶりが話題になっています。参議院議員選挙後「イラ菅がなりをひそめ、ひたすら低姿勢」といった報道が続きましたよね。

 実は私は30年にわたって陰から菅氏に声援を送ってきました。厚労相として薬害エイズ事件に切り込んだときは溜飲を下げましたし、以前首班指名されたときも時の変化を感じたものです。ですから、いよいよ首相か、と思ったら、正直感無量であったのです。

 しかし、就任直後から嫌な予感はありました。「強いリーダーシップを発揮して」と繰り返していたでしょう?ところが、彼には、強いリーダーシップを発揮する準備がなかった。たとえば、小泉さんは就任直後に、あれは参院選だったか勝利しましたね。あの勝利が議会与党に対する大きなカレンシーになった。議会は好きに法案を通せるようになる。かわりに郵政民営化とか靖国神社参拝とか目をつぶることになる。これがリーダーがメンバーと交わすカレンシーです。
 逆に国民あるいは議会にカレンシーを渡す前に、思うような政策など実行できるはずがありません。消費税騒動がきっかけといわれていますが、国民はまずネガティブのカレンシーを受け取ったと感じ、選挙でそのお返しをする。選挙の結果は与野党にとってネガティブカレンシーとなり、政権基盤を脆弱にする。

 たぶん、代表戦にでれば再選するでしょうが、それは反菅陣営(親小沢陣営?)の思うつぼ。カレンシーを押しつけられれば、相手の言いなりにならざるを得ない。反菅陣営のいうことを最後まで聴かなければならなくなるのは、本人にとって不本意でしょう。逆に菅グループを含む反小沢陣営から引きずり下ろされるかもしれない。こんな時忠臣がいないようだしなあ。

 リーダーは、相手より先にカレンシーを差し出さなければならない、というあまりにもわかりやすい事例になったようです。優秀な人ほど陥りやすい罠じゃないでしょうか。